嘘日記201707170339

味噌汁を飲もうと左手を動かしたら、お椀の横にあったグラスに左手が当たって、中に入っていた水がこぼれた。わたしは味噌汁をゆっくりと堪能し、倒れたままのグラスと、少し蒸発して小さくなった水たまりを眺めた。わたしは、水たまりがテーブルにシミをつくるのを眺めながら、桃太郎の持たされたきびだんごが、そんなにおいしくなかった場合における犬、猿、雉のリアクションの差異について考えていた。犬は気を使って、本当の感想は言わないだろうし、哀れんでついてきてくれるかもしれない。猿は本当の感想は言わないかもしれないが、自分が行きたくない場合には、その権利をきちんと主張しそうである。雉に関しては全く想像がつかない。お前は誰だ。

 

そうこうしているうちに、水たまりは完全なシミになる。わたしはiPhone7でそのシミを撮影し、MacAirdropで送る。シミをフォトショで修正し、修正した画像を印刷する。印刷した紙をシミのある場所にセロテープで貼り付ける。もうシミは見えない。顔を上げて見渡すと、わたしの部屋には随分セロテープが増えたなと思う。7:35分を指したまま動かない時計、ずっと晴れの窓、ずっと笑顔の羽鳥アナウンサーが写っているテレビ、色褪せた回鍋肉が乗ったお皿、動かない熱帯魚、枯れない花、優しく微笑む彼。ベッドに倒れこむと紙がくしゃくしゃと音を立てる。また明日の朝、この写真を撮ってフォトショで修正しようと思った。アドビ様、アドビ様、わたしの絶対神。今日も愛しています。